ランドスケーププロダクツが2000年にオープンさせたショップ「プレイマウンテン」。そこ並ぶオリジナル家具は、いずれもシンプルさを基調にしたモダンなデザインだが、単に機能的で合理的なだけでなく、人の心をときめかす何かを備えている。 プレイマウンテンはオリジナル家具以外にも、ミッドセンチュリーのモダンファニチャーや1点物の装飾的なオブジェ、現代のデザイナーによるプロダクツや工芸品など、インテリアに関連したさまざまなアイテムを取り扱う。ランドスケーププロダクツの家具には、そのどんなアイテムと合わせてもしっくりとなじむ自由さがある。ちゃんとしたスタイルを持ちながらも、まわりにスタイルを押しつけてしまうことがない。家具のデザインと並行して手がけているインテリアデザインや建築にも、同様のセンスが生きている。ただしそこに一目でランドスケープだと分かるような個性が表現されるとは限らない。あえていうならシャープさとカジュアルさのバランスが巧みな点、使いやすさ重視の機能的な空間に木目など自然の要素を取り入れる点が特徴だろう。しかしより明確なのは外観や素材の特徴よりも、誰にも身構えさせることのない空気感だ。たとえば2004年から始めたカフェ「Tas Yard」は、まさにそんな雰囲気。だからすぐに地元に根付き、幅広い年齢層の人々が気軽に訪れる場所になった。過去から現在にかけての優れたデザインやアート、そしてその作り手となった人々の人間性に触れることで、ランドスケーププロダクツらしさが育まれてきたことは明らかだ。企画から深くかかわった「イームズ・デザイン」展(2000年)と「民藝とランドスケーププロダクツの出会い」展(2003年)という大規模な展覧会。ブラウン、ポール・ランド、ジョージ・ネルソンなどをテーマにプレイマウンテン店内でたびたび開催したエキシビション。またオフィスにストックしてある大量の書籍や資料。そこからメンバーひとりひとりが吸収したものを、現代にフィットするように結晶化できるのがランドスケーププロダクツだと思う。そうして生み出されるものは、デザインというレベルを超えて、世界各地の感性を共有する人々を巻き込みながら、ひとつのスタイルや価値観へと広がりはじめている。
text: Takahiro Tuchida