MarfaとJudd

MarfaとJudd

書籍Donald Judd / Spacesをみていると、2016年11月の出張の折りに、アメリカ・テキサス州の南部にある〈Marfa〉マーファという小さな町に立ち寄った時の記憶が頭の中を駆け巡りました。

MarfaといえばDonald Judd。と漠然と認識してたものの、これまでこの土地を訪れた諸先輩方が興奮気味に話すその意味をいまひとつ理解しきれずにいました。

そんな中、幸運なことに実際にMarfaを訪れる機会をいただき、そこで感じた高揚感は忘れることができません。

ミニマル・アートやJuddについてほとんどの知識を持っていなかった僕でさえ、知識や言葉を超えた格別な実感がこの土地にはあったのです。

*ドナルド・ジャッド:Donald Judd 美術作家。1928年、アメリカ・ミズーリ州生まれ。1950年代後半から画家及び美術評論家として活動。1960年代に立体作品を発表し始め、特に箱形のオブジェを規則的に配置する作品が注目を集めた。この時期から広まったミニマル・アートの代表的な作家とされている。1977年にテキサス州マーファに移住して作品を制作し、同地域に恒久展示されている作品も多い。1994年没。

エルパソ空港から荒野をひたすら3時間ほど、あたりは砂漠地帯でこれぞテキサス!という乾いた空気感の中を走ったあたりにMarfaはある。

陸の孤島といわれるほどのアクセスの悪さに加えて、街自体も小さく車で30分ほどで周遊できるほどの規模にもかかわらず、フードコートの周りに若い人が多くいたり、感じのいいサインペイントの壁や洒落た外観の建物・お店が目立ちます。

Donald Juddは1977年49歳の時にニューヨークからこの地に移り住み、第一次大戦時の大きな米陸軍の施設を再利用して自身の理想となるアートの恒久展示を行いました。彼の死後は財団(Chianti Foundation及びJudd Foundation)が管理し、現在に至るまで一般に公開されています。

エントランスででチケットを買って自由に〜というミュージアムスタイルではなく、何時に集合という形でスタッフの方が同行してツアーです。

早速、スタッフに案内されながらDonald Juddの作品の建物を歩く。

大きな窓から差し込む自然光が均一に整列された作品を包み時間がゆっくりと流れる。

本来、無機質で冷たいイメージの素材が、形と配置の妙で、大きく印象を変えることができるという事実に驚きました。

ふと窓から外を眺めると広大に広がる荒野。

空には変わったカタチの雲が立ち込めていて、グッと土地に引き込まれる感覚を覚えました。

ここにくるまでのJuddのイメージは色鮮やかでどちらかというと都会的なイメージだったのですが、作品を取り囲む環境との調和が作品を超えて強烈に印象に残りました。

Marfaの訪問から数年経ったあと、某先輩から、「Juddって思想だよね」という言葉を聞いて、ぼくはすごく腑に落ちました。

この椅子も、このテーブルも、思想を具現化したようなもの。だから魅力的なのだと思います。

系列店のカフェTas YardにもJuddへのリスペクトが込められているのをご存知ですか?

この回転扉に、見覚えありませんか?

この回転扉はいつもの千駄ヶ谷の風景をつくってくれています。

Marfaでの夜はEl Cosmicoに宿泊。

ここも最高。音楽フェスなどの催しもおこなったりとヒッピーカルチャーが色濃く残り、トレーラーやサファリテント、ティピーで宿泊できます。

ぼくらが訪れた11月は朝晩は日本の真冬以上の寒さなのですが、そんな中での社長との野外シャワーはいい思い出です。

Marfaは小さい街です。その分、歩いたり、五感を通して全体のつながりを感じるような体験ができます。一度では飽き足らず何度を脚を伸ばしたくなる魅力があります。

同じ場所だろうと旅から得るものは必ずあって、ぼくはどちらかというと旅にでて帰ってきて、しばらくたった後に消化できることが多いです。

「あ、あのときの〇〇はこういうことか、、!」みたいな。

興味、関心ある地に実際に訪れることができる今の環境に感謝しつつ、それらを自分なりに消化して紹介していければと思います。

チェック柄のシャツをジーパンにタックインというテキサススタイルがますます魅力に思えた、初めてのアメリカ・テキサス州の旅でした。

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